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青春のPaco de Lucia [新隠居主義]

青春のPaco de Lucia

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 ぼくがPaco de Lucia(パコ・デ・ルシア)のフラメンコ・ギターを初めて聴いたのは大学に入ってしばらく経ったころだったと思う。それまでもフラメンコ・ギターは好きで、何枚かLPを買って聴いていた。一番好きだったのはManitas de Plata(マニタス・デ・プラタ)で、他にもCarlos Montoya(カルロス・モントーヤ)やJuan Serrano(ファン・セラーノ)など、どちらかと言えば当時の正統派的なものが多かった。

 フラメンコ・ギターは間違いなくぼくのスペインに対する憧れの引き金となっていたけれど、そんな中で知った当時の若手ギタリストであるパコ・デ・ルシアは、他のフラメンコ・ギタリストととはちょっと違っていた。それは当時はあまりいい意味ではなく「軟派」的な意味で違っていると一般には感じられていたかもしれない。

 デ・プラタがジプシーの誇りをもって、モントーヤやセラーノが生粋のフラメンコを体現していたのに対して、パコはラテンの曲やポップスの曲まで広くそのアンダルシア的スーパーテクニックで料理して見せた。ぼくにはそれが新鮮だったのだけれど正統的なフラメンコ・ギターファンからしてみればそれは軟派以外の何物でもなかったかもしれない。

 ぼくがパコの舞台を初めて見たのは1970年11月2日ドイツのハイデルベルク市立劇場でだった。その日の舞台はFestival Flamenco Gitano '70と銘打ったフラメンコのドイツツアーの一環で、劇場は出稼ぎでドイツで働いているスペイン人の観客で異様な熱気に満ちていた。ぼくは友人と二階のバルコン席で観ていたのだけれど、周りはスペイン人の観客でいっぱいだった。

 舞台のメンバーは踊りがMariquilla(マリキージャ)、ギターは当時のぼくと同じ23歳の若手のPaco de Lucia(パコ・デ・ルシア)そして歌は後にCamaron de la isra(カマロン・デ・ラ・イスラ)と称するようになった当時のEl Camaron(エル・カマロン)という、今思えば夢のような豪華な面々だった。

 マリキージャは今では伝説的なフラメンコ・ダンサーだし、カマロン・デ・ラ・イスラは1992年に亡くなるまでパコと舞台をともにしており、彼も今では伝説的なカンタオール(歌い手)になっている。舞台は汗の飛び散るようなマリキージャの情熱的な踊り、パコの千変万化に変容するギターそしてカマロンの胸をえぐるような歌声。舞台と客席が一体となったスパニッシュ・ナイトだった。

 実は、この舞台の数か月前の夏にぼくはパコの生まれ故郷であるスペインのアルヘシーラスを訪れていた。アルヘシーラスはジブラルタル島を望む海峡の港町で、ぼくはその時一人でそこから船でアフリカに渡りカサブランカまで行く途中だった。パコは毎日このジブラルタル島を見ながらここで育ったのかと感慨深かった。舞台を見ながらパコの生まれた町を歩いた時の焼けつくような太陽の熱を思い起こしていた。

 パコはその後自分の路線を貫き、ジャズやロックとのセッションも展開していった。ジョン・マクラフリン、アル・ディ・オメラそしてチック・コリアなど共演の世界は広がっていった。でも、もう誰もそれを軟派と非難するものはいなくなった。パコの選んだ道は軟派ではなくて、アンダルシアの風を世界に拡げる正に硬派な生き方だったのだ。

 でも、とても残念なことに、そのパコは先日2014年2月26日に突然滞在先のメキシコで心臓発作で亡くなってしまった。1947年生まれ、ぼくと同い年の享年66歳。虫の知らせかこの数か月パコのCDをちょっと集中的に聴いていたところだった。ネットでパコの葬儀の様子を見ていて胸が苦しくなって涙が止まらなかった。アンダルシアの人たちがどれほどパコを誇りに思っていたかが痛いほど伝わってきたから…。

<YouTubes>

Video homenaje Paco de Lucía

Paco de Lucia Entre dos aguas (1976) full video

Camaron de la isla & Paco de lucia - Bulerias 

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Flamenco Gitano Festival German Tour 1970




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その時のチケット


*1970年の素晴らしい舞台が忘れられずにいたのですが、
翌年の71年にもドイツツアーが実施されハイデルベルクにも再度やってきました。
結局それも観に行ったのですが、前年の時よりもツアーの規模が縮小されており
その時は特にエル・カマロンの歌に精彩がないように感じられました。
度重なる巡業の疲れでしょうか。
カマロンは後年薬で身体がボロボロになって夭折してしまいました。

**71年に再度、今度は冬に友人とモロッコに行く際に
パコの故郷の街アルヘシーラスを訪れたんですが、
その時はさすがに冬とあって強烈な太陽はありませんでした。


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Flamenco Gitano Festival German Tour 1971

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コメント 6

Silvermac

私もギターの音色は好きです。
by Silvermac (2014-03-17 15:17) 

おーやん

スペインと言えばフラメンコですよね。
聞くと元気が出ます♬
by おーやん (2014-03-18 06:39) 

親知らず

アルペジオがやっとの私にはフラメンコギターは雲の上。
しかしギターを弾いてみると、ギターの曲が今までと違って聞こえます。
6本の弦が奏でる音は無限で素晴らしいと思います。
by 親知らず (2014-03-18 13:49) 

ZZA700

大好きなアーティストが亡くなる喪失感。
私は去年の暮れに初めて体験しました。
by ZZA700 (2014-03-21 13:29) 

blanc

フラメンコ・ギターいいですね。
ちなみに従姉妹がフラメンコダンサーです。
by blanc (2014-03-21 23:13) 

sig

パコ・デ・ルシア、亡くなったのですか。といっても特定のファンというわけではなく、広い意味でフラメンコなどスパニッシュなテイストは好きなんです。日本の民謡よりも好きなのは、なんでしょうね。
by sig (2014-04-24 14:25) 

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