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興味深い時代を生きますように [新隠居主義]

興味深い時代を生きますように

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 「興味深い時代を生きますように」(原題:Moge u in interessante tijden leven=オランダ語) これはオランダ・アムステルダムを拠点に活動する現代美術家フィオナ・タンのプライベートなドキュメンタリー映画のタイトルだ。彼女はスマトラ島でインドネシアの華僑の父とオーストラリア人の母の間に生まれた。

 彼女の家族と一族はインドネシアで起きた反中国人暴動によって、同国を追われ世界各国に離散する。彼女の一家はオーストラリアに移住、その後彼女はオランダ・ドイツにわたり美術家となった。この映画の中で彼女はオーストラリア、香港、インドネシア、中国、ドイツ、オランダをまわって自身の血縁者たちを取材して回り、自分のアイデンティティは何か問うている。

 離散した親戚を訪ね、ついにはタン一族のルーツである中国の小さな村も訪ねる。その旅の中で彼女は私は中国人ではない、私は何者でもない、私は私自身でしかない、と感じる。離散した血縁者が辿った多難な人生に接して彼女が多少アイロニカルに呟いたのが「興味深い時代を生きますように」という言葉だったと思う。

 オランダに住む華僑の親戚は自分はもうオランダ人だと言い、インドネシアに残った華僑も今はインドネシアが故国だという。インドネシアを追われて中国に戻った親戚はそこでは最初はお客様扱いをされたが文化大革命が始まるとともに迫害され辛酸をなめたという。他の国の親戚のある者は自分は何処に居ても中国人だから今のように中国が強大になることは良いことだと言う。

 アイデンティティは帰属意識と強い関係がありそうだ。特定の国家や政体、文化や民族それらに帰属することはある意味では心地よいことかもしれない。帰属意識を高めるためには共通性と差異というものが用いられる。それは時として誰かによって意識的に用いられる。共通性は仲間内に向かい、外に対しては差異が強調される。

 でもその帰属意識に寄りかかりすぎると、とんだ肩透かしを食らうことになるかもしれない。時代や時の流れが、よって来たる帰属先自体を変質させたり破壊したりすることがあるからだ。時として帰属意識はその人の借り物のアイデンティティになっているかもしれない。どうもフィオナ・タンのアイデンティティはそれらを外したところから生まれてくるような気がする。

 タンのように異なる民族のハーフでなくとも、異文化の中に生活したものであれば自分のアイデンティティについて考え悩んだ経験があるはず。それによって自分が以前属していた集団への帰属意識がさらに強まる者もいれば、逆に拒絶に向かう者もいれば、帰属意識になんとか折り合いをつけタンのように自分自身の中のアイデンティティに目を向け始める者もいるかもしれない。

 ぼく自身彼女のようにはうまく折り合いがついてはいない気がするし、各国からの若い留学生達といつも接していると彼等の言動からぼくと同じような戸惑いが感じられる。もちろん、こんな問題に正解なんかは無いのだけれど今の時点で一つだけ言えるのは、この問題についてはその答えを誰かにゆだねてはいけないということ。自分の人生をずっと見続けている自分自身の「目」を信じて探ってゆくしかないと思う。

 
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(cam:GRDⅡ)

 *どうもオランダ語はドイツ語と英語をたして2で割ったような言葉で、聞いただけでは全く分からないけど、字ずらで見ると何となく意味が分かるようです。この映画のタイトルのオランダ語Moge u in interessante tijden leven.(興味深い時代を生きますように)もオランダ語→ドイツ語(一部英語)の対応で見てみると…
Moge→Möge(ドイツ語で願望を表す)
u→you(これは英語ですね)
interessante(ドイツ語と同じ「興味深い、面白い」)
tijden→Zeiten(ドイツ語で「時・時代など」これは少し違います)
leven→leben(ドイツ語で「生きる」)
語順は全く一緒です。もちろんオランダ語は勉強したことは無いのですが、オランダに行った折りに通りの標識や店の看板などぼくの乏しいドイツ語と英語の知識ででも意味が推量できたケースが多かったので、勝手にオランダ語≒(英語+ドイツ語)÷2と考えたわけです。
もしかしたら幕末でオランダ語やドイツ語をやっていた人たちが英語の世界に比較的楽に入って行けたのもそんな背景があったのかもしれませんね。

 話はそれましたが、ここでフィオナ・タンが使った「interessante」という単語は日本題の通り「興味深い」なんですが、同時に「面白い・楽しい」と言う意味もあるのでタンは単にアイロニカルに呟いただけでなくて、苦労の多かった華僑の人生が楽しいものであるように、という願いも込めているのかもしれないと思いました。


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コメント 4

mimimomo

こんにちは^^
今まで能天気に暮らしていたからか、あまり真剣に考えたことはないですが、
イギリスやアメリカに居て「違うんだなー」っと言うのはかなりひしひしと感じました。
by mimimomo (2014-09-22 15:11) 

Silvermac

今回のスコットランド独立投票を傍観して、帰属意識の強さを感じました。沖縄の場合、琉球の歴史から考えて難しい問題があるように想います。
by Silvermac (2014-09-22 17:03) 

TaekoLovesParis

フィオナ・タンの写真展、恵比寿の東京都写真美術館でやってましたね。
by TaekoLovesParis (2014-09-22 22:45) 

Beer Man

スペイン旅行でバルセロナのガイドさんと話した時に、ガイドさんが”私達はスペイン人ではありません”と強調していたのが印象に残っています。
by Beer Man (2014-09-23 11:52) 

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