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猫を巡るアフォリズム Aphorisms on Cats ~その22~ [猫と暮らせば]

猫を巡るアフォリズム Aphorisms on Cats ~その22~

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 ■老いと猫

 …老いるってことは病(やまい)るってことと同じ。
 だけど、それは闘うんではなくて、猫とつきあうように、病とか老いに静かに寄り添ってやるもんだと思うんだよね。一緒に連れ添っていくというか。

 よく、頑張んなきゃとか、しっかり生きなきゃとかいうけど、頑張んなくてもいい、寄り添っていけば。力まずに、それも自分だという風に生きていくと、すっと楽になる。そんなこと思ったの、つい三、四日前なんだけどね。(笑)…

 
(緒形拳「私と猫」)


 結婚してから初めて飼った猫タマ。ぼくが四十の時、その時の上司に頼まれて白い子猫をひきとった。何も考えずにタマと名付けた。臆病だったけど病気一つせず18年の天寿を全うした。この18年間はぼくにとって最も忙しい時期でもあった。

 まだ暗いうちに家を出て、帰ってくるのは大抵深夜過ぎ。子供の頃からずっと猫がいて一緒に育ったようなものだけど、自分で「飼う」というのは初めてだった。でもタマが来て感じたのは子供の時とおんなじで飼うというより一緒に暮らすという感覚だった。

 タマのおかげで家に居る貴重な時間がどれほどくつろいだものになっていたか、それが寄り添うということだったのだと、最近になって実感するようになった。猫の持つ独特の距離感ときまぐれさが却ってさり気無い寄り添い感を作り出してくれる。

 2005年の5月3日、タマはカミさんの膝の上で突然逝ってしまった。タマの晩年は穏やかなものだった。ソファーの陽だまりの中で寝ることがなによりも好きだった。自分の老後もこうだといいなぁ、と思いつつその隣にそっと座ったことも何度かあった。

 今、ぼくも歳をとって目はかすむし、歯は抜ける、腰は痛いし息切れもひどい。でもそれは抗ってみても仕方のないことだと思うようになった。緒方拳の言うように猫と暮らすみたいに、老いに寄り添ってやるというのも大事かもしれない。まぁ、言う程簡単にはいかないと思うけど…。


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 *緒方拳のこの文章は2008年の雑誌「猫びより」7月号に乗ったものです。その後この緒方拳を含め何人もの著名人がこの雑誌で自分の猫を語った部分を集めて「私と猫」という一冊の単行本になりました。

 緒方拳が亡くなったのは2008年の10月、71歳でした。この記事が載ったのが2008年の7月号ですから、ということはこの雑誌が取材していくらも経たないうちに亡くなっているということになります。

 この頃にはご本人も自分の病状には覚悟をしていたようなので、彼の口から発せられたこの言葉には実感と凄味があるように思います。彼が愛ネコの「オーイ」達と写っている写真はまさに枯れた大木のようでした。

 **緒方拳の自宅は京浜東北線沿いにあって細長い彼の家の庭をそとネコがいつも通り抜けていました。彼は通り過ぎる何匹かのネコに、「品川、大井、蒲田、川崎」などと駅名をつけていたのだけれど、その中の茶トラの「オーイ」だけが居ついて家猫になったらしいです。


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kjisland

おお、そんなお話があったんですね、ありがとうございます。ちょうど、今日、腰が痛くて、痛くて、いつものカンボジアの学校に行くのも休んでしまったので、今日のこの記事はすっと入ってしまいました。(笑)
by kjisland (2016-07-06 11:23) 

ナツパパ

いいお話を伺いました。
寄り添って暮らすのは、たしかに難しそう...
...でも、それが一番の方法かな、と思います。
軽度の老いを感じるこの頃、これからどうなるのか。
とりあえず、母が元気なうちは息子ですから元気でいなくては。
寄り添うどころの話じゃなくなっちゃうけれども。
by ナツパパ (2016-07-06 18:13) 

たま

うちのたまがgillmanさんのお宅にお邪魔したのかとおもってしまいました。
わたしの老を感じるこのごろ、たまの老も愛しく思います。
タマちゃんの「最後の記事」覚えています。たまもこんなふうに逝けたら、、、と、思います。
by たま (2016-07-07 21:22) 

ゆきち

病とか老いに静かに寄り添う、そういう心境に達することができれば本当にいいですね。
どうしてもジタバタしてしまう、何とかしようと無理してしまう、力んでしまう方が人の常な気がします。
by ゆきち (2016-07-09 14:07) 

coco030705

こんばんは。
緒方拳さんの文章、いいですね。よくわかるし納得がいきます。猫って、ほんとに寄り添ってくれる存在です。だから猫といると安心します。絶対裏切らないだろうと感じるからでしょうね。
ところで、今日路地を歩いていてら、2匹の茶トラが店のドアの前に置いてあるマットの上で寝そべってたので、「兄弟?」って声をかけたら、パッと起き上がって建物の隙間に潜り込んでこちらを見てました。びっくりしたのかしら。つい、言葉が通じるような気がして……。

by coco030705 (2016-07-10 00:45) 

nicolas

老いを受け入れるって、大変なようで、
実はすごく楽になれる方法なのかもでぃれないなー
と、最近すごく思えるようになってます。
by nicolas (2016-07-11 17:17) 

親知らず

誰にでも平等に来る老いと死。
それをどう迎えるか、どう受け入れるか。
こんな道もあるよと教えて頂いたような気がします。
by 親知らず (2016-07-18 09:45) 

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